株式会社アポロン
鈴木 智彦|東京薬科大学
在宅ならではのやりがい
私は祖父の代から薬剤師で両親も薬剤師です。だからというわけではないですが、理科が好きだったのと、資格の取れる職種で考えたときに、結果として薬剤師の道を選びました。当社に入社して8年目になります。新卒で入社した薬局から在宅に取り組んでいたのですが、M&Aされたときに在宅をやらなくなりました。”受け持っている患者さん達はどうするんだ”という思いで、在宅のできる当社で働き始め、当時の在宅患者さんもそのまま当社で担当しました。
当社の在宅業務では、お薬を届けるようになったのは10年ほど前で、医師の問診に同行したりするようになったのは3年前からです。施設には週に2回訪問しており、是政店の薬剤師のほとんどが在宅に携わっています。是政店にはクリーンルームもあるので、処方箋調剤のみではできない、点滴をつくったり、モルヒネを混ぜるといった高度な医療にも取り組むことができます。
在宅では自分次第で患者さんの状態が左右されてしまいます。そこには答えはなく、自分の知識や裁量、コーディネート次第で患者さんの容態は良くも悪くもなります。例えば、1日3回の薬を出している患者さんが朝起きていなかったときは、朝起きて薬を飲みましょうと言ってもその患者さんの生活スタイルがあるので、そこに薬の薬物治療を絡み合わせていかなければいけません。朝寝てるのであれば朝の薬を飲ませる必要はないんです。患者さんの生活に合わせて、1日1回の薬に変更するなど、薬剤師が主体となって処方提案できます。薬は飲んで効果が出なければ意味がないので、1日3回漫然と出していればいいわけではありません。私たちが、患者さんの生活スタイルや体調の変化、薬の服薬状況、それら全てを見ていかないと最終的な治療には至らないのです。逆に、患者さんとコミュニケーションがとれ信頼関係も築けていくと、どんどんプラスに向かっていきます。こういった薬剤師が判断したことにより患者さんの容態が良くなり、その結果、患者さん自身や家族の方に喜んで頂けるのを直に感じ取れるというのは在宅ならではのやりがいだと思います。
また、在宅医療であれば、医師と直接話す機会も多いので、処方提案もしやすいという点もやりがいになります。患者さんの変化を生で見られるので、そこに対して薬の使い方が適正がどうかというのを薬剤師が主導で判断し、医師の診察に同行できると”そういう考えでこういう薬を使うのか”と分かることがあるので、自分の引き出しを増やすことができます。医師に処方提案してよいのか心配される方もいるかと思いますが、悩む必要はありません。伝え方には注意が必要ですが、医師も聞き入れてくれますよ。「○○の症例で△△の薬を使いたいのですが、先生はどう思いますか?」というような聞き方をしていますね。仮に自分に知識がなくても、調べましたということも直接医師に伝えることができ、それならばやってみようかということになります。一生懸命患者さんのために何かをしたという姿勢は絶対に伝わります。