ドラッグストア業界の
可能性と薬剤師の役割
調剤報酬の改定は現在2年に一度行われています。その度に医療・医薬品業界は見直され、薬剤師を取り巻く環境も変化していきます。
「門前薬局」の診療報酬が減額されることもあり、薬剤師の雇用はどんどん厳しくなっていくでしょう。こうした中で、ドラッグストア産業は時代の要求に応えるべく進化をしていき、薬剤師の活躍が拡大していっています。
ここでは、薬剤師雇用の受け皿として期待されるドラッグストア業界について考えていきましょう。
目次
1.多機能化するドラッグストア業界
近年「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」というセルフメディケーションの考えが一般にも浸透し、健康への関心は高まっています。
セルフメディケーションを実践するためには、まずは普段の日常生活のバランス(適度な運動と食事、十分な睡眠など)を保ち、体調不良になった際に服薬する一般用医薬品(OTC医薬品)の知識を身につけることが必要です。
そして一般の方がOTC医薬品に関する正しい知識を身につけるための身近な相談窓口になるのが、ドラッグストアのお薬相談室です。
OTC医薬品の中でも、第二類と第三類は登録販売者がいれば販売可能ですが、副作用や相互作用などのリスクが高い要指導医薬品や第一類医薬品を販売するには、薬剤師が常駐することが義務付けられています。
つまり、ドラッグストア業界でも薬剤師が必要とされているのです。
また日常のサポートだけでなく、今までは製薬会社の独壇場だった医薬品開発においても、自社ブランド開発を手がけるドラッグストアチェーンが出現しています。
OTC医薬品の販売や仕入れを行うイメージの強いドラッグストア業界ですが、実は商品開発に関わることができる機会もあるのです。
医療チームを組んで在宅訪問医療を積極的に推進するドラッグストアも増加しています。OTC販売や調剤だけでなく、ドラッグストア薬剤師の活躍の場は拡大しています。
2.ドラッグストアで働く薬剤師のやりがい
ドラッグストアは、消費者のニーズに応えてOTC医薬品のほかに日用雑貨や介護用品まで取り扱っているので、罹患していない人でも普段から利用しやすい店舗です。
そのため、町の調剤薬局と比較しても、より地域の方々を身近に感じられる職場ともいえます。
ドラッグストアで働く薬剤師は、医薬品の知識だけでなく、サプリメントなどの栄養補助食品の知識も持ち合わせていなくてはなりません。
また、服薬指導だけでなくセルフメディケーションの重要性や健康相談、食事の摂取方法を含めた生活指導を提供することが期待されています。
つまり、ドラッグストア勤務の薬剤師は健康関連商品全般のプロフェッショナルとしての職能が注目されるのです。
ドラッグストア業界の多機能化によって、薬剤師は患者と直に接して、自分の専門性を発揮した健康面でのコンサルタントに従事できます。
また、セルフメディケーションの実践により国民の通院が減り、その結果医療費の削減にもつながりますので国家的・社会的に意義のある仕事にも貢献できるといえるでしょう。
商品販売や仕入れといった、ほかの職場ではなかなか経験できないスキルも身につきますし、本部勤務の場合は会社全体の運営などマネジメントに関わりながら昇進していく道もあります。
また一般的に、ドラッグストアは調剤薬局チェーンや病院に比べて給与が高いことも魅力のひとつです。
ドラッグストア業界での勤務は、調剤業務とは違った働き方・キャリア形成ができるのです。