Topics 現場取材!インタビュー特集

薬剤師に聞いた!インタビュー特集

公務員薬剤師に聞きました!

大分県庁

公務員を就職先として選ぶ薬学生って、5%ほどしかいないこと、ご存知ですか?
もしかしたらどんな仕事をしているのか分からないから、就職先として選ばないのではないかとファーネットでは考えました。
大分県庁に勤務されている、若手薬剤師のお二人にお話を聞きました。幅広く地域のために活躍する、公務員薬剤師の姿が見えてきました。

  • Q長谷川さんと岡本さんの仕事内容について詳しく教えて下さい。
    A

    長谷川: 私は2012年に福岡大学を卒業し、現在は大分県福祉保健部の薬務室に所属しています。薬務室は医薬品等の安全確保や献血の推進を図っており、私の主な仕事内容は医療機関での麻薬適正使用の確認や、学校での薬物乱用防止に関する講演等です。小中学校での薬物乱用防止教室は毎年1回必ず行う決まりなので、学校薬剤師の方とも分担しながら、大分市内の学校を回っています。大分市以外の市町村は、それぞれ管轄の保健所の職員が実施しています。また、麻薬の適正使用に関する業務では、麻薬の廃棄や保管庫のチェック、在庫の確認を行なっています。使用期限の切れた麻薬等を廃棄する際は一緒に立会い、大きい病院では、毎年1回は必ず監視指導を行います。

    岡本: 私は大分県生活環境部の環境保全課で働いています。環境保全課は生活の環境を守る仕事で、大気保全班と水環境班に分かれています。その中でも私は水環境班で水道行政を担当しています。市町村だけでなく民間の方が行なっている水道事業や、井戸水等を使った専用水道等の許認可を主に行なっています。また市町村等の水道事業経営についての相談を受けたり、水道の水質管理や適切な水道料金の設定、計画作りなどを指導したりもしています。年に1回程度、事業者のもとへ立ち入りをして、施設が老朽化していく中で現在の水道料金は適切なのか、現在の運営情況や水質はどうか、等の確認もしています。また山間部には水道が普及していない地域もあるので、その地域を今後どう整備していくのかも考えなくてはなりません。水道水の検査は民間の水質検査機関が行っているので県で直接検査することはなく、許認可や水道事業者の指導が主な仕事です。その他、水環境班では水質汚濁防止法等に基づいた事業場排水の監視・指導、公共用水域の水質調査などを年間通じて行っています。大気保全班の方では、ばい煙発生施設の届け出の処理や立ち入り調査などの大気汚染の防止に関する仕事を行なっています。PM2.5や放射能の対応、解体工事等で発生するアスベストに関する届け出の処理や立ち入り調査も保健所と協力して行い、県民の生活の安全を守っています。

  • Qいつから公務員を志したのですか?
    A

    長谷川: 私は六年制の一期生なのですが、実習を経験する中で、病院や薬局での調剤業務の他に私が薬剤師として出来る仕事はないのだろうかと漠然と考えていました。その時に友人に『公務員として働く道もある』ということを聞いたのが、公務員薬剤師になろうと思ったきっかけです。公務員であれば地元である大分県で働くことができるし、薬事監視や食品関係の仕事はとても魅力的に思えました。試験の内容や仕事内容は、公務員試験を受けていた先輩が同じ研究室にいたので、勉強の仕方や採用の流れも先輩に教えてもらいました。同じ研究室に公務員志望の先輩がいたことは、知識の殆ど無かった私にとってとてもありがたかったです。

    岡本: 私は在学中に一番興味があった分野が公衆衛生だったので、はじめから保健所の業務に興味を持っていました。薬学部に入ったきっかけは資格を取りたかったというのが始めですが、勉強をしていくうちに公衆衛生に興味を持ち、その道に進みたいと思ったのです。また、公務員薬剤師の親戚がおり、公務員としての薬剤師の存在が身近だったことも要因かもしれません。病気になる前の予防のお手伝いをしたいと在学中からずっと考えていました。現在の水道は塩素で消毒をしていますが、塩素消毒が始まる以前は水道を介して運ばれた病原菌から病気が流行っていったこともありました。現在の水道は、有毒な物質が混じらないよう水質検査をして安全な水を供給しています。そういう仕事に携わりたかったのです。

  • Qいつごろから勉強を開始していましたか
    A

    長谷川: 試験内容は一般教養と専門の薬学知識があり、薬剤師は特に専門分野のほうに力を入れています。勉強開始時期は特別早くはありませんでしたが、友人たちが国家試験の対策を始める少し前から始めていました。難易度は国家試験と同様か少し簡単なくらいです。

  • Q配属先はどのようにして決まるのでしょうか
    A

    岡本: 配属先は採用後に県が決めます。本人の希望も第2希望まで聞いてもらえますが、最終決定は上のほうで人数の偏り等も検討しながら決定します。なので絶対第1希望のところで働けるかというとそういうわけではないです。ただ、入職後は2~3年周期で県庁・保健所・衛生環境研究センター・県立病院を一通り経験できるようにジョブローテーション制になっています。ですので、それぞれの職場を勉強してから自分に向いた道を選んでいくことが出来ます。

  • Q入社前から行政職のイメージは掴んでいましたか?
    A

    長谷川: いえ、漠然としかイメージしていませんでした。現在の学生さんも公務員の薬剤師の仕事を知らない人も多いのではないでしょうか。例えば、グリーンツーリズム(農業体験など)やブルーツーリズム(漁業体験など)の許認可を出したり、旅館や公衆浴場、美容室の管理などまで幅広く関わる仕事があるのですが、なかなかそこまで知ることは出来なかったですね。私自身、先輩や友人に聞くまでは公務員としての薬剤師がどこで働くのはよく知りませんでした。私は同じ研究室に公務員試験を受けた先輩がいたのでかなり話を聞くことは出来ましたが、興味が無い人は知らないまま卒業する人も多いのではないでしょうか。入職する時も、実は細かい仕事内容は殆ど分かっていなかったのですが、どの仕事をしても面白そうだと思っていたので、どの配属先になっても後悔は無かったと思います。

  • Q県職員の中でも人気のある職場というのはあるのですか?
    A

    岡本: 民間の病院や薬局で働いた後で入庁してきた人は、調剤以外の新しい仕事をしてみたいという人が多かったので、県立病院よりは他の職場の方が人気だったようです。私は初めから保健所を希望していましたが、どの職場も一回は経験したいという人が殆どだと思います。

    長谷川: 私の場合、入社前は行政職のイメージがあまり掴めていなかったので、はじめは県立病院で働きたいと思っていました。しかし、今は自分の仕事がとても面白いと思っていますし、他の配属先に行って今までとは違う様々な仕事をしたいとも思っています。現場で働くうちに実際の仕事内容を把握してくると、自分がどんな仕事をしたいのかが明確になってきた気がします。

    岡本: それぞれの職場に違ったやり甲斐がありますが、例えば私が保健所で勤務していた時は、地元の方の悩みを直接解決できる喜びを感じていました。今の県庁での仕事は、県全体の問題を自分の力で改善していけることにとてもやり甲斐を感じています。県庁にいる人は現場のことも知らなければいけないし、現場にいる人は県庁の大局的な判断を知った上で動かなくてはなりません。県職の薬剤師だけで集まる懇親会等もあるので、配属先は違っても互いに顔を見合わせる機会はあります。どの職種も互いに助け合える部分があるのです。

  • Q公務員として働く中で嬉しかったことややり甲斐を感じたエピソードを教えて下さい。
    A

    長谷川: 年に数回、小中学校での薬物乱用防止教室も行なっているのですが、講演後に生徒さんからお手紙を貰ったことがあり、とても嬉しかったです。実際に感想を貰うと、とてもやり甲斐を感じられますね。入職前から、薬物乱用防止教室等の啓発活動等は興味を持っていたので、実際に自分で実施することが出来て嬉しかったです。

    岡本: 私の仕事は県民の皆さんが安全に水をいつでも使用できるようにすることです。新型インフルエンザがもし流行して、水道を管理をする職員が出勤できなくなると、県民に水を届けることが出来なくなってしまいます。担当職員への意識啓発や、職員が減った場合でも継続して水道水が使えるような計画作りを市町村等に指導しました。事前にしっかり準備と対策をして万が一に備えることが出来るようにするのが私の仕事です。誇りを持てる仕事ですし、対策を講じていくのはやり甲斐があり面白かったです。

  • Q逆に大変だったことはありますか
    A

    長谷川: 大変なのは、毎年4月5月になると、けしの花が咲いていると連絡が入ることです。けしの花は見た目が綺麗ですので、知らずに家庭で植えてしまっていることもあるんです。しかし、けしを植えるのは違法ですので通報がありましたら抜きに行かなくてはいけません。せっかく綺麗に咲いた花壇に入り、花を抜かなくてはいけないことはとても心苦しいです。

    岡本: 以前保健所に配属されていたときの話になりますが、近隣の住人の方から『工場からの臭いが気になる』等の苦情をよく頂いていました。しかし一方的に工場側に意見をするのではなく、公平に両者の言い分を聞いてから判断をしなければなりません。何度も行き来して話を聞くのは時間も掛かりますしとても骨が折れましたが、両者が納得できるよう折り合いがついた時はとても達成感を感じました。

  • Q公務員薬剤師はどんな人におすすめできる仕事ですか
    A

    岡本: 地域の人とのコミュニケーションも多いので、行政職として県民の人とかかわりたいと言う人、人と関わることが好きな人におすすめできる職場です。病院や薬局での勤務は、病気になった人としかなかなか関わりを持つことは出来ませんが、公務員は全ての県民の方から相談を受けるので、より広域で関わりが持てます。地域住民の生活のサポートが出来る仕事にやり甲斐を感じる人にはぴったりだと思います。また、麻薬の廃棄は公務員薬剤師じゃないと出来ない仕事ですし、そういう医薬品の適正な管理によって危険を未然に防止する仕事や、予防医学的な仕事が出来るのは公務員薬剤師ならではだと思います。

  • Q仕事内容とおおよその流れを教えて下さい
    A

    長谷川: 外出をしない日は、まずはメールの確認をして麻薬取扱者免許の申請手続きの認可・確認をしています。その他、国への報告の集計、講演等で使用する資料の作成等を行なっています。週に1度程度は外に出て、医療機関での麻薬の適正使用の確認や学校での講演を行なっています。長期休みの前は薬物乱用防止教室の依頼がたくさん来るので、少し忙しくなりますね。また、12月は麻薬取扱者免許の更新があるので、申請が集中してしまいます。およそ1,500人分の認可をこなしていかなければならないので、事前に準備はしっかりしておかなくてはなりません。

    岡本: 外に出ない日は講習会の資料や認可申請書類の審査、水道管理等に関する相談の電話の対応をしています。相談の電話は1日に2~3件ほど掛かってくるのですが、水道施設の図面を見ながら土木系の職員と連携もしてアドバイスをしていきます。もちろん、現場での仕事も多いですよ。市町村から水道事業の計画の相談を受けると、次はその結果を市町村が議会に掛けます。市町村の条例の改正等を確認してから、認可するのですが、その議決内容を持ってくるのが3月頃に集中してしまうので、年度末は忙しいですね。

  • Q学生へのアドバイスをお願いします
    A

    岡本: 早い段階で研究室選びをし、自分が何をしたいのかを漠然とでもいいので方向性を決めておくといいと思います。

    長谷川: 就職活動は、早く動き出した人の勝ちです。興味があるのなら見学に行ったり、話を聞きに行って試験の科目内容等は知っておいた方が良いです。情報収集は速い段階からしましょう。

  • Q最後に大分の魅力を教えて下さい。
    A

    長谷川: 私は地元が大分なので、地元で働こうとずっと決めていました。大分県は海も山もあるし温暖な気候ですごしやすい土地です。美味しいものもたくさんあります。

    岡本: 私も地元が好きなので大分に残ろうと思っていました。自然が大好きですし、釣りやスノーボード等のレジャーも楽しめますし、温泉もあります。地方都市ならではの情緒も多い風情のある街だと思います。