相談を受けることの大切さ信頼ができて初めてお薬をお渡しできる

株式会社誠心堂薬局（千葉県）
代表取締役　西野 裕一

漢方薬局と聞くと、なんとなくかしこまってしまう感じだったが、取材が始まる前からスタッフの方々の親切で暖かい雰囲気で出迎えていただいた。社長もお元気に挨拶される感じの良い雰囲気と暖かい空気感を持たれていた。そんな素敵な社長から、独立から今後までの話を聴いてみた。

• 漢方はどこかで修行を積まれてきたのでしょうか？

  有名な先生に師事して、修行を積むようなこともなくこの道に進んだのですが、大した理由はないんですよ（笑）。薬学部に進学したのも、今の学生のように薬剤師免許を取得しておくことがいいかなぁという理由で薬学部を選択する時代でもなかったですし、単純に薬学を勉強するために選択したくらいで、志がすごく高かったというわけではありませんね（笑）。大学卒業後に、関心のあったチェーンの漢方薬局に入社したことが始まりですね。漢方に進む方の中では、私は少し違う流れかもしれないですね。

• 独立されたのはどのようなきっかけですか？

  漢方というのは、相談を受けて提案して信頼をしていただくことでお客様がついてきます。私の考えている地域密着の漢方相談は、地域での信頼、定着という考え方を第一と考えています。ですから、大都市に店舗を持つよりも住宅地にお店を持つ方が私にはピッタリしていました。当時の住まいの近くに10坪ほどの小さな薬局を開業しようと考えたのです。独立した当時は、私と家族が食べていけるだけの生活ができれば十分であると考えていたので、会社をここまで大きく広げていく気持ちは全くなかったですね。

  

• 会社を成長させるにはかなりのご苦労があったのでは？

  苦労しましたね。最初は、漢方薬局という看板だけではお客様もお越しになってもらえませんので、日用雑貨品を置くなどしてとにかく来店いただくことに力を入れていましたが、そんな簡単なことではなかったです。明日を生きられるかどうかの毎日でした。今となってはそのような苦労もなかったように店舗展開できていますけどね（笑）。
  このように苦労していた時に、何くそ！という気持ちで自分を刺激し、戒めのようにして今も掲げている社是と社訓を書きました。

  
  社是
  誠心堂薬局は
  お客様も愛を持って接し
  お客様の心とふれあい
  お客様の健康を考え
  お客様の感謝の言葉を
  最高の糧（かて）とします
  

  
  上記の社是を見ていただいてわかる通り、「健康を考え」の言葉の前に「愛を持って接し」「心とふれあい」を先に持ってきている通り、相手の気持ちに寄り添い信頼関係を築かなければならないと考えて、当社の従業員は日々人と接することに対する勉強に励んでいます。私自身、この社是を掲げたことで、相手の気持ちに立つこと、地域の方々の信頼を得ることに励んでここまできました。
  漢方薬が欲しいから、この漢方薬を出して欲しいというニーズにお応えしなければならないですが、その前にお客様のことをしっかりと知ることと、私たちのことを知っていただくことが必要と考えています。それが相談薬局に大切なことであり、当社の考えです。

  

• 今後の展開はどのようにお考えですか？

  最初にお話をしたように、ここまで店舗を展開することを考えていなかったのですが、出店した地域の皆様にご利用いただき、少しでもご利用いただけるお客様が増えればという気持ちで、地域No.1になることを考え半径2キロ圏内で出店をし、更に誠心堂薬局という名を知っていただけるようにするためには東京の中心部で出店していかなければならないと思い、銀座や自由が丘などに店舗を展開してきました。漢方を知ってもらうためにという気持ちでやってきました。
  そして、漢方と鍼灸が中医学の両輪という考えの基、鍼灸院爽快館も出店してきましたが、現在では総合相談室として、漢方と鍼灸で総合的にお客様の健康を支えていくために、東京都内中心部で出店の加速を考えて動いています。

• 漢方を知っていただく難しさはありますか？

  知っていただく難しさは、独立した当初は感じていましたが、今はさほど感じていないですね。まずは社是で掲げている理念に則した考えで、婦人科系に集中しお客様の認知度アップに力を入れていることです。ご利用いただいているお客様には大変喜んでいいただいている現状があります。特化していくことで認知も上がり、知っていただく機会も増えていきます。そして今後さらに加速していくと思われるオンラインにも力を入れており、ネット販売や動画配信、オンライン相談などの活用により広く知っていただくことができています。相談を受けてお客様の心とふれあうことができれば、漢方を知っていただきご利用が増えていくものだと思っています。

• 難しいと思われる漢方の世界に、どのような新卒者を求めますか？

  薬学を学んできたみなさんには、調剤薬局で活躍することだけでなく漢方薬局で活躍できる素養があります。中医師認定を取得するための勉強はもちろんのこと、たくさんの勉強が必要となります。何よりも、お客様に愛を持って接し、心とふれあえる気持ちを持つための勉強が必要となります。実際の現場での勉強だけではなく、勤務時間外に勉強をすることを拒んではなりません。自分のためでもあり、何よりお客様のためです。当社の考えに共感していただき勉強に勤しむことができる人をお待ちしています。厳しい中に仕事の楽しさがある当社で、私たちと一緒に、これからの漢方相談薬局をつくっていける方を歓迎します。