3つの「やらない」を決めて
次世代の薬局をつくっていく
株式会社徳吉薬局(鳥取県)
代表取締役社長 徳吉 淳一
本社:鳥取県 出店エリア:鳥取県 店舗数:8店舗
設立:1979年 従業員数:106名
笑顔で気持ちよく出迎えてくださる薬剤師や事務の方の対応が素晴らしく、風通しの良さが伝わってくる会社。嫌味のない爽やかな3代目社長の薬剤師や薬局をどうみているのか、これからどのような経営をしていくのか聞いてみた。
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どのようなきっかけで、開局・会社が設立されたのですか?
徳吉薬局を最初に開設したのは、祖父になります。この経緯が面白いというか、見方によっては短絡的に捉えられるかもしれないのですが、私は3人兄弟で三つ子です。祖父は、公務員として病院薬剤師として勤務していたのですが、「三つ子が生まれたからお金が要る!」と思ったことがきっかけだったそうです。父親も母親も薬剤師ということもあり、薬局をやって家計を安定させようという気持ちがあったそうです(笑)。このような薬局開局、会社設立から始まりましたが、父の代、私の代とここまでやってこられたのは、祖父の好判断だったのだと感じます。もちろん、地域のみなさんの健康維持向上のために、親切丁寧に患者様のためにという思いを持って薬局を開局しています。そして、徳吉薬局を選んでいただける薬局をつくってきました。
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社長を引き継がれたのはどのようなきっかけですか?
既定路線で、私が社長を引き継ぐことはわかっていたのですが、急に「社長を交代しよう」と言われてドタバタで、このコロナ禍に交代をしました。社長に就いてからは、これまでの見方とは変わりましたね。会社規模の拡大にて、店舗を増やすことが必要だと私なりに考えて頑張ってきたのですが、従業員のことをこれまで以上に考えるようになり、どのようにして守っていかなければならないのかという見方をするようになりました。売上を上げていくことが、会社そして従業員を守ることではあるのですが、現状を見つめ直しこれまで以上に働きやすい環境を作り、現状の規模で利益をどのように上げていくかという視点が必要だと感じました。
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大学を卒業されてから、どこか別の会社や病院で勉強をされたのですか?
大学卒業後、すぐに徳吉薬局に入社しました。鳥取という土地柄と薬剤師が今以上に不足していた時代でもあったことに加え、地元の病院が院外処方になることに決まったこともあり、すぐに地元に戻って仕事をする流れとなりました。その病院門前薬局に私と弟で、わからないことばかりでしたが、10年間共にあくせくしながら働いてきました。この期間に経営の勉強もし、他の店舗での経験もしながら、良い薬局とは何かを模索しながら頑張ってきましたね。周りからは、「他の会社のことも知らないで何ができるんだ」という見方もされることもありましたが、他の会社を経験しなくて良かった点が多いように感じています。懸命に働いてきたことにより、早い段階から従業員との関係構築を築き上げることができたとことは大きいと思います。 一般的に、社長の息子で後継者という立場だと周りに遠慮されたり、嫌な空気感を漂わせたりすることがありますが、そのような気持ちに従業員の皆さんがならないように、弟と共にがむしゃらに仕事をし、皆さん以上に働く姿勢を見せるようにしてきたので、良い人間関係の構築ができたのだと思っています。 現場での薬剤師以外の仕事では、人事制度など含め経営的な勉強をする機会も自分なり作ることができたのも良かったと思います。
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差別化されていることはありますか?
鳥取県内で薬局と言えば徳吉薬局と言われるために、患者様や地域の方々の健康、薬、お困りごとにお応えできるようになるために活動をしています。 それが経営理念に挙げさせていただいている「More Than A Pharmacy」に込められています。たくさんある薬局の中「A Pharmacy」から、選んでいただけるから「The Pharmacy」になることです。 そのために、私たちは「なんでもできる」をコンセプトに薬局としてできないことが無いように挑戦し続けています。外来受付はもちろんのこと、在宅医療への取り組み、管理栄養士が活躍できる栄養相談、混注業務ができる無菌室の完備など全ての業務ができるように活動をしています。 できないことが無いと自負しています。接客、服薬指導に関しても同じです。患者様や地域の方々が、徳吉薬局に行ったら気持ちよく、楽しく生活ができるようになったと言われる場所になるように、日々心がけて活動をしています。まだ8店舗ですが、地域には欠かせない薬局になっていると思っています。
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そのような人材を育てていくために、どのような取り組みをされていますか?
研修会、勉強会はお金を惜しまず、様々な機会を与えられるようにしています。ただ、そのような機会だけではなく、お互いが刺激になる機会が必要だと思っています。それは、一緒に現場で働くことです。私が育成指導をするということではなくて、お互いがお互いを刺激し、勉強をしていくことが、実際の現場では重要だと考えています。わからないことを気楽に聴くことができる環境、お互いの意見を伝え合える環境など単純なことですが、一緒に仕事をしてお互いが教え合う環境がないと人は育たないと思っています。
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無菌調剤室を稼働されていますが、開始される時はどのように覚えていかれたのですか?
医師から「退院後に対応してくれるところがないから徳吉さんやってくれないか」と、10年前にお声がかかり始めたのがきっかですが、知らないことばかりだったので、県外の知人の薬局にお願いして、勉強の機会をいただきました。手探り状態で始まりましたが、たくさん勉強させていただきスタートできました。実際に稼働してから、病院にも勉強会の機会をいただけるように話を持ちかけたところ、研修をしていただけることになり、従業員が順番に勉強に出向き、従業員全員が無菌調剤での仕事ができるようになりました。
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在宅はどれくらいの件数をされていらっしゃいますか?
点数を算定しているものは、月に300件ほどになります。鳥取県は、在宅が多い県ではないので、当社は県内では多い方だと思います。全店舗で、在宅に関われる薬剤師が10名ほどいますが、その10名が全店舗に登録されていて、必要な時に必要な場所で稼働できるような体制で取り組んでいます。そして、なんでもできることが我々のコンセプトなので、在宅チーム以外の薬剤師も、1人1件は在宅の担当を持つようにしています。時代のニーズとしては在宅をやっていかなければならない時代なので、在宅への取り組みは進めています。
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8店舗を展開されていますが、今後の出店のご予定はいかがですか?
先ほども話をしましたが、店舗を増やすことや会社を大きくすることが、従業員を守っていくことではないと思っています。あと2店舗は、近々出店することを想定して動いていますが、「これをやって行こうではなく、これはやらない」ということを、決めて動いています。そのやらないは「M&Aに屈しない」「鳥取を出ない」「介護事業はやらない」の3つの「やらない」を決めて動いています。やっていこう、ということよりもやらないことを決めた方が、軸がはっきりするので、この考えで動いています。出店については地域性もあり、薬剤師が簡単に採用できるエリアではないので、無理をして現在の環境を変えてまで拡大を考えるのは、リスクがあるので出店に重きを置かないようにしています。
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新卒者の受け入れは、どのようにお考えですか?
まっさらな気持ちと、まっさらな頭で、仕事を吸収する速度も早く、いろいろなことに挑戦できる方が多いのが新卒入社の方々です。私も新卒でこの会社に入社し、従業員の皆さんと苦楽を共にしてきましたので、新卒者が入社してからどのような気持ちで仕事をしていくのか、どのような勉強や研修が必要なのかを、わかっているつもりです。一緒にバカができる人で、知識をひけらかさない人、自分のありのままの姿を出せる人と共に、地域の皆さんのために一緒に働ければと考えております。徳吉薬局に入社していただければ「損をさせません」(笑)。