医療を中心とした「まちづくり」を。
地域薬局だからできること。
株式会社ロングライフ(静岡県)
代表取締役 米田 博文
本社:静岡県 出店エリア:静岡県 店舗数:16店舗
設立:1991年 従業員数:106名(グループ全体)
優しそうな笑顔で出迎えてくださった米田社長。気さくで穏やかな空気感をもたれていらっしゃるが、仕事に対する熱意が伝わってくるオーラと年齢を感じさせないパワフルさを発していらっしゃる。医療モール型を中心とした薬局展開をしているが、そこには地域薬局の本質を追求する社長なりの考えが詰まっていた。
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独立される前はどのようなお仕事をされていましたか?
大手製薬会社のMRが社会人の始まりでした。配属が静岡県中部・西部だったのですが、日夜病院へ出向き、とにかく働きづくめの毎日でした。おかげさまで全国トップの成績を納めていたこともあり、「勢いがある人材はいないか」と声が上がった際には大阪に栄転が決まりました。単身赴任という形で大阪へ移ってからも当時は接待全盛期でゴルフや飲食の機会が多かったため、家族のことも顧みる余裕もなく仕事ばかりの毎日でした。そんなある日、接待ゴルフのために景品を買いに行った時に、家族が楽しそうに過ごしている光景を見て「俺は何をしているんだ?」と自問自答したことが会社を辞めるきっかけとなりました。
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ご家族への愛情の気持ちが強かったのですね
子供がまだ幼少だったこともあり、高熱が出たり、風邪をひいたりなど急に駆けつけたいことがあっても、当時は交通の便が今のように良くないこともあり、大阪から家族の住む静岡へすぐに駆けつけられない距離でした。そうしたこともあって、家族の側で子供たちの姿を見ていたい気持ちが強くなっていきました。仕事ばかりの毎日が嫌なわけではなかったのですが、大切な家族のことを感じる余裕がなかったのだと思います。今こうして家族と生活を共にし、仕事も一緒にできているのは当時の転機がなければ実現していなかったかもしれませんね。
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とは言っても薬局開局は簡単なことではなかったと思いますが
一足先に開局されていたMR時代の先輩がいたのでアドバイスを聴きに出向いたり、休みの日にはセミナーに参加したりしていました。これからは、薬剤師だけでなく医薬品卸や製薬会社出身の人が薬局を開局する時代になるだろうという話を聞いて、これなら自分でもできると思って会社を辞めて開局に向けて動き出しました。もちろん苦労覚悟です。ただ単身赴任時代とは異なり、家族の側で仕事ができる喜びや安心があるので、苦労を苦労と思わず開局の道に進むことができました。
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1店舗目の開局はどのようなご縁でしたか?
マンツーマンの薬局からスタートしたのですが、私からお付き合いのあった病院の医師に声をおかけしたのがきっかけです。その医師が今後のことを悩まれていらっしゃった時期とちょうど重なったこともありご一緒に開局をしました。当時は、まだまだ医薬分業も進んでいませんし、薬局を開局するから一緒にやりませんか?なんて声をかける者はいませんでした。何処の馬の骨かわからない者に声をかけられ、騙されているんじゃないかと周囲から見られた時代です。
そんななかお声をかけた医師も、薬を多く出しすぎているのではないかなどの疑問を抱いていらっしゃっていて、意にそぐわないことをしているように感じ、患者様のためになることであれば一緒に開業をしようと決心していただけました。 -
そこから医療モールへと進まれたのは何故ですか
ある時、当社の薬局で薬を受け取った後に、近くに受診したい診療科のクリニックがないので、別の地域まで移動して診察してもらうと患者様から話を聞いたことがきっかけでした。「近くに良いクリニックがあったらいいのにねぇ」とのお声でした。それなら薬局の隣の空いている敷地にクリニックを開業してもらえれば良いと考え、知り合いの大学教授に「誰か良い医師はいませんか、紹介してもらえれば・・・」と早速動いたことがきっかけです。当時は、通常このようなお声がけをしても、医師にとってメリットがあるとは思えず、一つ返事では進むものではなかったのですが、私の熱い気持ちが伝わったのか、患者様のためになるなら、という気持ちですぐに決断をしてくださいました。
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医療モールから次はどのようなことに着手されましたか?
医療モールの実績が認められたことにより、行政と駅前の土地開発をする話になりました。この本社の場所である袋井駅前の開発です。何も無い広大な土地に商業施設、医療機関、介護施設、保育園などを一つの場所に集めて「まちづくり」をすることに参画させていただきました。当時は、駅前には何もなく、「この何も無いところに本当に人が集まるのか?」と周囲からは冷たい目で見られたと思います。地主さんとの交渉に走り回り、説得する日々でした。医療機関にもお声がけをする大変さもありました。野ざらしで草が生えているだけの場所を視察にこられても、まさか今のような状態になるとは想像もしなかったと思います。構想から年月が経ち、今ではショッピングモールや医療機関に多くの方が訪れ、定期的に駅前でフェスタが開催されるなど平日土日問わず賑わいを見せている状況となっています。
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薬局の会社でも「まちづくり」ができるということですね
様々な施設が立ち並び、人がそこに集まることだけを「まちづくり」とする、受け身的なものではなく、積極的に継続的な交流の場を持つことが大切だと思っています。市が主催するフェスタにも参加し、子供の薬剤師体験会を実施したり、地域の皆様の健康維持を目的として、医師による講演会や健康測定会などを主催することもあります。地域貢献、地域のためにという言葉をよく使いますが、薬局を建てて終わりにするのではなく、ここまで行って初めて真の地域貢献だと強く感じています。地域医療とは、地域全体が一緒になってやっていくことです。そして、そこで働く薬剤師やスタッフ全員が、やりがいを持って働くこと、患者様含め地域の皆様に親切丁寧なサービスを提供することが私たちの役割だと思っています。
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社長は、活動的に動かれていますが、その行動力は昔からですか
60歳から空手を始めました(笑)。身体を動かすために始めたのですが、段も取得しています。歳を取っても目標に向かって動くことが好きなのでしょうね。空手を始めたことでご縁も生まれました。道場で習っている子供達と一緒に稽古に励んでいる時に、その子供の中にたまたま医師のご子女がいらして、そのご縁でご一緒に開業することになったこともあります。たまたまのご縁ですが、活動的に動いているとご縁を呼んでくるのでしょうね。人は、何かの目標や夢に向かっていれば、その気持ちが伝わり、ご縁が舞い込んでくるものだと思います。鳥取の農家に育ったので、まさか自分が独立をして静岡でこのような立場に就くことになるとは、思ってもいなかったです。社会人になり、様々なご縁をいただきここまでやってこられました。頭でっかちにならずに行動したことで生まれたそれぞれのご縁が転機になったのだと思います。学生時代はお金もなかったので、学費を稼ぐために泊まり込みで新聞配達をするなど苦労を苦労と思わず、やれることは自ら動いていました。昔から目標に向かって動くことが好きだったのでしょうね(笑)。
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今後はどのような活動をお考えですか
袋井市での医療モールを実績に今後も各地の自治体とタイアップして医療を軸とした街づくり事業を展開していきたいと思います。既にお声がけ頂いている自治体もあり、介護施設やホテルチェーンなど豊富な民間企業とのパイプを軸にこれまでにない新しいモデルを模索していこうと邁進しております。
また本業とは別で今も活動をしているのですが、浜松医大が立ち上げたNPO法人の理事となり「子ども食堂支援」「ウクライナ難民受入支援」「医療物資の支援」などお困りになっている地域や人にできる限りのこと、社会貢献を続けていきたいと考えております。行政・自治体とのお付き合いを大切にし、地域創生、安心安全、子育て環境など、できることをチャンジし続けていきたいですね。 -
薬剤師に求めていることはどのようなことですか
薬局に求められることが変わってきているように、薬剤師は進化に対応していくことが必要だと思います。大手薬局チェーン店でできないことを、当社を含め地域の中小薬局は考えねば存在意義はなくなってしまいます。そのためただ目の前の処方箋を裁くだけではなく、積極的に調剤室から外に出て地域貢献できる薬剤師になってもらいたいと思っています。今後は電子処方せん対応、遠隔地医療など前例なく挑戦すべきことがたくさんあります。たくさんの進化と課題に打ち勝つことができる薬剤師になっていただきので、そのためにも我々も成長ができる薬局で在り続けます。
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どのような新卒薬剤師に入社してもらいたいですか
薬剤師は処方せんに合わせて薬を出すだけの仕事ではなく、今後は今まで以上に在宅(現場・医療)での活躍の場が期待されています。これからの時代に合わせた柔軟な考え方、効率よく、経営視点を持ちながら行動、活動ができる若い感性に期待し、チャレンジ精神の豊かな方に入社していただきたいと願っています。地域に根付いた薬局の良さを感じていただけると思いますので、まずはぜひお気軽に当社の見学にお越しください。