ドクターとの信頼関係を大切に!
医療人の一員として励む薬局
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医療人の一人として存在意義を認識できる
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医師・スタッフと信頼関係を結び、医療チームの一員として患者様を支える
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在宅訪問の同行による研修で、生きた学びを提供する
薬剤師の仕事の一つとして、昨今、注目されている在宅訪問。個人宅や介護施設に薬を届ける役割というイメージですが、実際の現場はどのようなものなのでしょうか。そこで、神奈川県を中心に関東で開局している薬剤チェーンのオール・プラン社の在宅訪問の拠点、オアシス薬局の薬局長であり、管理薬剤師の石原則子さんにお話を伺いました。
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Qオアシス薬局が考える在宅訪問とは、どのようなものですか?A
医療人の一員として、ドクターや看護師、その他のスタッフと一緒に、一人の患者さまのクオリティ・オブ・ライフをあげるためにチームで取り組むことです。ドクターの往診時の付き添いや調剤、それらを薬棚に届けるのはその一環にすぎません。業務の核となるのは、情報の共有、そして分析と実行です。関わるみんなが同じ方向を向き、どのようにしたらいいのかを話し合い、出した結論をもとに進めていきます。そのためには、チームの信頼関係、特にドクターとの関係は重要です。これは、出された処方箋を調剤して届ければいいという意識では築けません。そのため、人間関係作りに励むことも在宅訪問ならではの仕事といえるでしょう。
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Q在宅訪問での薬剤師の役割とは、どういったものですか?A
ドクターと患者さまとの間に立つ存在のため、橋渡し役といえるかもしれませんね。患者さまが先生に直接言いづらいことがあると「石原さんから話しておいて」と言ってきたり、ドクターからの要望を施設に伝えたりなど、関わる人々のコミュニケーションを受け取ったり送ったりします。また、ドクターに患者さまのさまざま情報を伝える役割も。私たちは往診後に調剤した薬を届けに施設などに行きます。その時にスタッフから患者さまの情報をもらうこともしばしば。さらに、患者さまは内科だけでなく、皮膚科や外科に通った時にも薬局にお越しになります。それらの情報を集約してドクターに伝えることで、診察に役立ててもらいます。
また、ドクターが処方する薬に関して、必要な時には提案もします。例えば、過去に同様の薬剤で肝臓機能が悪化したことがあった患者さまへの対応では、その旨をドクターに伝えて薬剤を変更していただいたことがありました。ドクターばかりに判断を委ねるのではなく、連携しながら薬剤師としての知識を提供することは大切なことです。施設によっては、訪問するドクターが毎回違うといったケースもあります。そのため、患者さまのこれまでの病歴、血液検査値やバイタル値、服薬状況、副作用といったことを伝えていくことも必須の業務。こうすることで信頼関係が生まれていき、オアシス薬局なら任せられると言ってもらえるようになるのです。
ドクターに言われたものを持っていくのはあたり前。薬剤師だからできることをしないと意義が薄いだけでなく、安心感や信頼も生まれにくいですね。そういった点では、薬局にいて調剤するだけの業務ではないため、やりがいはあります。 -
Q在宅訪問の研修制度はどういったものですか?A
私たちは、現場研修に重きを置いています。インターンも同様です。学生や社員は、私に同行し、横ですべてを見てもらいます。そして薬局に戻ったら調剤し、それらの薬がどうして処方されたのかといった復習をするのです。実際の患者さまを見ているので、「あの状態ではこの錠剤は飲めない。だから粉砕が必要なんですね」などと、患者さまと薬の関係性を結びつけることで、さまざまなケースに対応できるようになり、さらに提案型の調剤ができるようになっていきます。また、現場の雰囲気やドクターとのコミュニケーション、関わる人々の動きなどを体験してもらうことで、状況の判断力や分析力も上げることができます。
弊社の研修は、私の元にずっとついてもらいます。そのため、期間中は同じ患者さまを担当。単に業務を知るだけでなく、患者さまと仲良くなったり、回復していく状況などを見ることができ、その喜びも味わえます。また、在宅訪問では「発熱したからすぐに来て」「薬をすぐに持ってきて」といった突発的なことも多数。こうしたことは現場に携わらないと知ることはできません。そして、ドクターをはじめ、看護師や介護士、患者さまのご家族などとの関わり方や働き方も肌で感じることができます。施設の中には勉強になることがたくさんありますからね。ここでは、生きた学びができる体制を整えているので、在宅訪問をやりたいという気持ちがあれば、すぐに現場研修に参加してもらいます。 -
Q在宅訪問の流れを教えてください。A
①在宅訪問前
研修を終えたスタッフと患者さまについて確認をしながら、資料や書籍を準備します。②往診時
往診時は先生の近くに沿い、話を聞きながら必要に応じて情報を提供します。③施設長、患者さまとのコミュニケーション
患者さまの日頃の様子や薬の効き具合、往診時に処方された薬についてなど、施設長とさまざまな情報交換をします。患者さまとのコミュニケーションは体調のことをはじめ、ふとした会話から知ることができる情報などもあるため、重要な時間です。
④バイタルチェック記録
各患者さまの体温や脈拍、血圧を記録することで、日々の体の状態から薬の効果などをチェックします。⑤薬箱
施設の薬箱を確認し、残っているものや不足分などを把握します。⑥報告
薬局に戻ったら、患者さまの状況や薬の変更など情報を共有し、調剤する準備をします。⑦処方薬の仕分け
調剤し終えた薬類は、施設や患者さまの要望に沿って朝昼晩などの色分けなど作業を行います。そして、順次お届けします。 -
Q石原さんが在宅訪問に取り組んでみて感じることはどのようなことですか?A
医療人であることを認識させてもらったことですね。患者さまの病気との付き合いに関して、医療を取り巻く人と同じ時を過ごし、同じ目線で経過を見ることができる──、薬剤師としての自覚はありましたが、医療人という気持ちは持っていませんでした。調剤だけを行っていたら、感じられなかったことでしょう。そして、これはドクターとの信頼関係が構築されている証でもあります。会社自体がドクターといい関係を築くことを重視しているため、社長自らが行動し、さまざまな支援をしてくれます。そうしたバックアップもあり、薬剤師として現場にいる意義を全うすることで、「僕たち医療人はね」とドクターが同じ立場で話をしてくれたり、勉強会への参加も促してくれるのです。とても嬉しいことですね。
また、看取りも経験しています。患者さまやご家族さまと親しくなりますから、御逝去時には施設から電話が入るのです。みなさまと一緒に患者さまを見送ったときは感慨深いものでした。薬局内では経験できないことですね。 -
Q在宅医療に興味を持つ学生のみなさんにひと言をお願いします。A
医療というものは日常のこと。つまり365日稼働しています。そうした現場で働くことは、簡単とは言い難いですが、やりがいと喜びは、それは大きなものです。弊社は薬剤師にさまざまな仕事を任せてくれ、やってみたいことはやってみろという風潮があることから、やる気のある人には適した場所。在宅に興味があるなら、医療人のスタッフとして、オール・プランの一員で働くことはオススメです。