Topics 現場取材!インタビュー特集

在宅医療を頑張る薬局特集!

大切な「出会い」をつないで、最高のチームワークを発揮。

在宅医療は薬剤師の知識と、スキルを存分に活かせる仕事です。

  • すべての店舗で「居宅訪問」を行なっている

  • 在宅医療は「将来、薬剤師の主要な仕事となる」と考えている

  • 医師、看護師、介護士など他職種との情報共有を重視

名古屋を中心に「レインボー薬局」と「かなで薬局」の7店舗を展開している、一般社団法人れいんぼう。
地域医療に貢献するため、積極的に地域に出て、施設や自宅で療養する患者さまにお薬を届けています。
今回は、そんなレインボー薬局で活躍する、主任薬剤師の伊藤稔さんに密着しました。
次から次に出てくる新薬やジェネリックについての勉強など、自己研鑽が求められる薬剤師の世界ですが、「患者さまのお役に立ちたいという気持ちが、パワーの源です」と語る、伊藤さんの往診同行の様子をレポートします。

  • Qレインボー薬局の在宅医療への取り組み状況は?
    A

    レインボー薬局では、すべての店舗で「居宅訪問」を行なっています。高齢者施設の種別は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護付き老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、グループホームなど。全店舗を合わせて、施設在宅は7施設で月500人以上、個人在宅は月100人以上の患者さまを訪問しています。
    患者さまのご自宅への訪問では、患者さまやご家族とのコミュニケーション、往診医や訪問看護師、その他の支援スタッフとの連携が重要となります。
    往診医への情報提供、時にはバイタルチェックや処方提案まで行っています。また患者さまご自身の健康づくりの方針を、自己決定できるようにサポートするのも私たち薬剤師の務めです。
    国の方針である「地域包括ケア」により、患者さまが病院以外の場所で療養されるケースも多くなっていますので、在宅医療は薬局にとってますます重要な仕事となるでしょう。

  • Q在宅訪問では、どんなことをしますか?
    A

    訪問する場所によってもちがいますが、残薬の確認や、お薬カレンダーなどにお薬をセットします。
    今回はドクターと一緒ですが、薬剤師が単独で訪問するときは、お薬を届けるだけでなく、体調や症状の変化、副作用が出ていないかなどをお聞きし、健康状態をドクターにお伝えします。場合によっては、飲みやすいお薬への変更をドクターに相談することも。
    日常の食生活で気を付けたいことや、サプリメントなどの栄養補助食品に関する情報もお伝えしています。
    れいんぼうでは、患者さまが安心して療養できるよう専任の「かかりつけ薬剤師」がサポートしています。
    私は基本的には薬局内での勤務ですが、毎週決まった曜日に在宅訪問をしています。うちの薬局が担当している個人宅は10軒で、そのうち2軒が私の受け持ち。今日訪問する施設は、4人の薬剤師が週替わりで担当しています。

    伊藤さんの所属する東海通店の調剤室

  • Q施設の場合の往診同行の流れは?
    A

    今日は、ドクターの所属する病院が経営する高齢者施設へ同行します。同行する前日までに、あらかじめ作成した処方せんの日数をカルテと見比べたり、入力がまちがっていないかなど、細かくチェックをしておきます。
    薬局のすぐとなりが施設なので、ドクターからの連絡があり次第、私も徒歩で向かいます。
    まず最初に事務室で、ドクター、施設のスタッフ、訪問看護師、薬剤師とで簡単に打合せをして、その日診察する患者さまの体調などの情報を共有。こうした情報交換が在宅医療ではとても重要なんです。それから4人で各個室をまわります。
    すべての部屋をまわり終えたら、事務室に戻って再びカンファレンス。回診中にメモしてきた報告書を3人分コピーします。薬局にもどったら、今日出た処方せんに従って、調剤作業を行います。

    メンバーが揃ったところで、往診前のカンファレンス

    薬局にもどって、今日の処方せんをチェック

  • Q実際の訪問の様子を教えてください
    A

    まずはドクターがひとりひとりに声をかけていきます。以下、患者さまとのやりとりの例です。

    患者さま「いつもの薬は残ってます。湿布と塗り薬ください」
    伊藤さん「はい、わかりました」

    患者さま「娘が持ってきてくれたおやつ、食べてもいいですか」
    ドクター「1日1個にしてくださいね。朝か夜に1個ずつね」

    患者さま「私この曲大好き。クロードチアリの『夜霧のしのび逢い』」
    看護師さん「伊藤君は若いから知らないよね」
    伊藤さん「そうですね…」

    ドクター「夜、眠れませんか。じゃあ薬出しときますね」
    伊藤さん、すぐさまメモをとる

    介護スタッフさん「ここに来たときは、まだ自分で歩けてたのにね」
    看護師さん「少し運動できるようにしたほうがいいかな。自転車こぎはどう?」

  • Q現場で注意していることは?
    A

    チームで個室をまわるときは、ドクターや看護師さんのじゃまにならないよう、いちばん最後に入っていきます。でも自分が確かめるべきことは、しっかり主張してやっています。毎日患者さまに接している介護スタッフの方からも、積極的に情報収集。そうすることで、急な処方への対応もスムーズになります。
    ドクターとの同行は、薬についてすぐ相談できることがメリットです。「この薬は、病院の採用薬にあったかな?」など、その場で答えられなくても、調べて回答するようにしています。
    今日のようにチームで動くためにも、日ごろから看護師さんや介護スタッフさんとの信頼関係を作っておくことが大事ですね。

    訪問終了後のカンファレンス

  • Qこの仕事で得られる達成感は?
    A

    個人宅の場合は、直接患者さまの薬を管理できることが、薬剤師としての腕の見せどころです。しっかり飲めているか確認して、飲めていない場合はドクターに報告することもあります。旦那さんが入院して寂しく過ごしておられる方につかまって、長々と話し相手をすることも…。いずれにしろ在宅医療の仕事は、これからの薬剤師にとってやりがいのある現場となるでしょう。

  • Q在宅医療を目指す後輩へ一言
    A

    学生の皆さんには、在宅医療に興味を持っている方も多いと思いますが、就職先によって在宅の仕事を専門にできるとは限りません。
    今日訪問した施設は、薬局と同系列の法人が経営しているので、協力的でやりやすいですが、気をつかうところもあって想像以上にたいへんかもしれません。
    けれど、まずはやってみてください。熱い思いがあるなら、トライして欲しいと思います。
    私も以前から在宅医療には興味があって、今それに関わることができていることに、充実感を感じながら働いています。